仕上げる気力をなくした短文たち。


★益+美由紀+榎

　神は気まぐれに託宣する。

「ふぅんマスオロカぁ」

　私は応接用の机を借りて宿題を片付け、益田は私の斜め向かいで、調査の報告書を買いていた。
　益田と共に探偵の指定席を見やると、探偵は美貌を歪ませにやぁと笑っている。
　彼の表情のヴァリエーションに慣れてきたので、この笑い方が何を意味するかはわかる。
　ヤマアラシに化けにゃんこ、人を吸い込む鏡、エチオピア人振る探偵助手、それらを前にする時の顔だ。どう遊ぼうか、どう虐めようか、ワクワクして仕方がない、というカオ。
　美由紀以上に探偵と共にする時間の長い益田は、当然それを見抜いている。ナンですかぁと言う顔は引き攣っていた。
「随分奇特なお嬢さんなんだな」
　よくよく見てみれば、探偵は益田の頭の少し上に視点を合わせていた。記憶を視ている、ということはわかるが、探偵の意図するところはわからない。
　益田を見ると、驚いたのか呆けているのかわからない顔で探偵を見たまま固まっている。顔が赤くなっているように見えるのは気のせいなのか。
「親切な僕は下僕であるお前に選ばせてやろう喜べ」
「はあ？」
「今ここで女学生君と白昼堂々からかうのと、夜木場と酒の肴にからかうの、どっちだ！」
「――ど、どっちもイヤですよぉ！」
「お前なんかに拒否権があるわけがないじゃないか馬鹿だなぁ」
　わははは、と軽快な笑い声と、益田の鳴き声が、白い光の差し込む事務所に響いている。

　益田は卑怯だ、と思うことがある。彼の卑怯さは、自身を卑怯で小心者だと触れ回ることに尽きる、と思う。
　卑怯なんです小心者なんです、と前もって言っておけば、周りから要らぬ期待はされないし、期待されなければ失望されることもない。
　期待されるのが怖いのだろうと思う。誰かに縋られたら、必死に頑張らずにいられないのだろう。
　ややこしいことは抜きに、彼が心の底から卑怯な男であったとしても、私は益田のいいところを結構知ってしまっている。


（ここまでで終わって益。彼女ができた益田と、それを散々からかいたい探偵と、益田を評価する美由紀。かつて美由紀は益田にほんの一瞬だけときめいたことがあったのよ、というお話にしたかった気がします。しかし今のところ形にする気力がないので、とりあえずさらしてみましたん）

　
　＊

エノミユ掌編『恋する血液～』と『解けたリボン～』で靴脱がしシチュを書きましたが、
そのずっと前に、同じテーマで書いたものがありまして・・・。
「お前これ靴脱がしっていうか靴どころじゃないじゃん」というお話です。つまりいやらしいハナシ。
先日アップした、『毒林檎』のお話の原型でもあります。

絶望的に榎木津さんが偽者です。こんなの違う。

ただまあ、なんか出来上がっていないこともなかったので、
こっそりさらしてみます。私の貧乏性め。
読んでやろうか！という方は下からどうぞ～。

 

★探偵×女学生　

滑らかな皮膚が張った足の甲を、唇で撫でた。
「あっ、ちょっ・・・」
慌てて引っ込めようとした足首を掴む。掌に余る細さに少しだけ驚いた。しかし手の力は緩めずに、そのまま彼女の足の裏に口付けながら少し舐めると、びくりと震えるのが舌先に伝わる。そっと視線を上げると、見えた景色に目が熱くなった。
捲くれ上がったスカートから覗く脚の白が眩しい。脚の生々しさとは正反対に、ブラウスをきっちりと着込んでいるアンバランスさは妖しい。
そして、掌で口元を隠しながら、切なげに目を細めている彼女の表情、その瞳の濡れた様子が、頭の芯をぐらぐらと揺さぶる。
目の奥が熱い。
踝、脹脛の筋肉にそって、唇と舌を這わせた。
小さな小さな鳴き声が、鼓膜を擽る。
煽っているつもりが煽られている。それはいつもそうなのだが。
彼女の足はふわふわと柔らかく、また若い筋肉は硬く張り詰めていて、唇に乗る感触が変わるたびに彼女の輪郭を実感として浮かび上がらせた。

誰がそんなこと言ったか知らないけれど。
手の甲、額、頬、唇、瞼、掌、腕と首以外にする口付けは、狂気の沙汰なのだという。
狂気か。狂気ねえ。

それに身を任せることは、今このとき、とても魅力的だと思った。
優しく優しく狂気的に、この子を愛する快感にだけ溺れたい。
いいなそれ。最高の狂い方じゃないか。

内腿を指で撫でながら、付け根の方へ唇を滑らせる。
白い皮膚はきめ細かく艶々としていて、触れる指先や舌に返る弾力は脚のどこの部分よりも強い。思わず歯を立てて噛り付く。痛かったのか、それとも悦かったのか、彼女が息を呑む気配がして、掴んでいる太腿を引こうとした。もちろん許さない。
下着の際までたどり着いて、感じた甘い香りに、また狂う。
本当、なんて最高の狂気。



メモもさらしてみます。
【エノミユRつくかつかないか　前戯で終わりの掌編
足の甲から口付けていく榎さんサイドからのセックス描写。靴を脱がせるシチュエーション。】

（榎木津さんらしくなくて参ったね！益田にすればよかった！彼ならどんな変態ぽさもクリアしてくれる気がするのに!!）