しみじみと慕う心を語る時、それはきっと極めて冷静で、理性がフル稼働している時でなければならず、だから互いの身体に触れている時ではだめで、
好きで幸せだ
そう思うことを切々と語って聞かせてみたくなるのに、、
それを語る自分を客観視すれば非常に照れくさく恥ずかしく、
結局口に出すことを諦める。
諦めてから、何やら何かしらに対して悔しいと思うところがあり、
目の前で水羊羹を口に運ぶ恋人は実に暢気なものだと、八つ当たりのように睨み付けてみる。
視線に気付いたのか、もぐもぐと咀嚼しながら上がる瞳は、ほんの僅かに不機嫌で、
睨み付けていたのを忘れて首を傾げてみると
今度はごくんと羊羹を飲み込んだ口元を、何故かへの字に曲げる。
そうして再び、大きく掬った水羊羹をばくっと口に含む。
細く開いた窓から入った柔らかな風に促されるように、
胸が痛くなるほどののどかさを噛み締めた。
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あとがき
下手にいちゃこらしているよりあまーーーーーーーーいのかも。
本気を出さねばならぬことの多い世情だからこそ、ぼへっとできる時にはぼへっとしたい。
榎さんはそういうエスパーでないので美由紀ちゃんの考えていることなんてわからんと思いますが、
蜜月な二人が考えていることなんてどうせ似たり寄ったりだと思いますとも。
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